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サファヴィー朝期以前のイランのイスラーム建築1
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マスジェデ・ジャーメ
8世紀創建、エスファハーン

模型
写真1199 マスジェデ・ジャーメ全体模型

創建は8世紀にまで遡る、エスファハーンで最も古いモスク。モスクの模型(写真1199)を見てもらえばわかるように、非常に大きなモスクである。現在残っているうちの大部分は12〜14世紀に修復されたもので、現在の基本プランはセルジューク朝の時代にほぼ完成したとされる。『ペルシア建築』の著者、A.U.ポープはこの建築を「セルジューク朝建築の高貴にして力強い性格を物語る最良の実例」と絶賛している。

基本はセルジューク朝期にできたとはされているが、非常に古いモスクなので、たびたび増改築がなされてきている。そのため、内部の装飾や仕組みなどがあまりにも多種多様で、短時間で全部見るのはとても無理である。私は1時間しか滞在できず、駆け足でようやく回ったという感じだった。そのようなわけで、ここでの記述の多くは自分で見た見解の他、事前の文献調査で利用した上記の『ペルシア建築』を大いに参照したものになっている。

中庭

中庭と南のイーワーン
写真1179 中庭と南のイーワーン

托鉢僧のテラス
写真952 中庭と北のイーワーン(托鉢僧のテラス)

主のテラス
写真948 中庭、南のイーワーン(主のテラス)

師のテラス
写真949 中庭、西のイーワーン(師のテラス)

チャハール・イーワーン形式の中庭(約60m×70m、写真952、写真1179)を囲んで、アーケード状の回廊がある(写真1199)。回廊はアーチを上下二層に重ねた開放的な形式で、淡黄色の煉瓦からなる躯体の表面にファイアンス(彩釉タイル)のモザイクが施してある。4つのイーワーンは、いずれもセルジューク朝時代の作をもとにして修復や再装飾を加えたものである(写真948、949、952)。

西イーワーンのムカルナス
写真1162 西のイーワーンのムカルナス

西イーワーンのムカルナス
写真1165 西のイーワーンのムカルナス

中庭では主礼拝室のドームの迫力には圧倒された(写真948)。また、特に西のイーワーンの大きなムカルナスは、内側に入ると包み込まれるような感じを受ける(写真1162)。このムカルナスでは、広狭の微妙なバランスをとった形も新鮮に感じられた(写真1165)。

主礼拝室

主礼拝室ドーム
写真1149 主礼拝室のドーム

主礼拝室
写真1142 主礼拝室、古い柱がある

主礼拝室は直径15.2メートルのドームを頂く。ドームを支えるために三葉形のスクィンチが使われている(写真1142)。この形はヤズドにあるブワイフ朝時代のダワズダー・イマーム廟のスクィンチの発展形である。そのスクィンチを支えているのは堂々たるピア(円形断面の柱)写真1149)。このピアは上端部分がアッバース朝風の唐草文様を表すスタッコ浮彫で装飾されており、確実にドームより古いものといえる。

回廊

回廊天井
写真1131 ドーム状の天井

回廊天井
写真1136 ドーム状の天井

回廊
写真1127 柱の林立する回廊

回廊
写真1141 天井の明かり窓から光が差し込む

主礼拝室の左右はアーケードやコリドールが延々と連なり、煉瓦造の驚くほど多種多様な(二重殻の)ドーミカル・ヴォールトで覆われている(写真1131、1136)。なかには、ゴシック建築の手法に似た自立的な枠組みや頑丈なリブをもつヴォールトも少なくない(写真1131)。これらのヴォールトを支承しているのは、たいていの場合、円柱状のピアであるが、古くはセルジューク朝時代以前のものから、新しくはサファヴィー朝時代のものまで含む(写真1127)。

ゴンバデ・ハーキ

ゴンバデ・ハーキ
写真1188 ゴンバデ・ハーキ

ゴンバデ・ハーキ基部
写真1189 ゴンバデ・ハーキ基部

ゴンバデ・ハーキ移行部
写真1190 ゴンバデ・ハーキ移行部

審美的な観点から最も重要な区画は、ゴンバデ・ハーキと呼ばれる北端のドームであるとされる(写真1199右端、写真1188)。これは1088年の銘を持ち、現存する最も完全なドームとも言われている。それはアーチ曲線が四隅の部分から始まって、段階的な包括性を発揮しつつ、壁面意匠の構成要素を順次に囲い込む(写真1189、1190)。そして、最終的には、その多重的な総体がシングル・シェルのドームの中へ溶け込んでいく(写真1189)。ドームは垂直上昇的な力の流れにおける究極の到達点に他ならない(写真1188)。

ゴンバデ・ハーキのドームの内側の装飾は、浅いレリーフのように浮き出た一つの大きなシンクフォイル(五弁文様)が施されている。簡素ではあるが、気品を備えた美しい文様だと言われている(写真1188)。

事前調査では絶賛されていたゴンバデ・ハーキだが、私が実際に訪れた感想としてはちょっと違った。確かに11世紀のドームとしてはこの上ない偉業だとは思ったが、タイル装飾の華やかなものと比べるとややインパクトがないように感じた。しかし、実地ではそう思ったのだが、このサイトを作成するために改めて写真を見直してみると、確かに上記の説明が指摘してきた見事さに感嘆せざるを得ない。何とも玄人好みの渋いドームである。

北西礼拝室のミフラーブ

ミフラーブ
写真1174 美しいミフラーブ

モスクの北西の礼拝室にあるミフラーブは(修復中にも関わらず)見事なものだった。特に、細かいインスクリプションがすごい。

このようにこのモスクはあまりにも多様性に富んでおり、見どころが満載なので、短時間で見るのは大変である。モスクに興味がある人は、観光する場合、ぜひ朝一か昼の礼拝直後に行くことをお勧めしたい。



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